さて、みなさん前回のお話を覚えてらっしゃいますでしょうか？
はい、私もどこまで行ったか忘れかけていました。
不況の今日この頃と言っても、やはり月末は多少忙しいもので、なかなか進みません。
はい、言い訳です。
さ、あまり盛り上がらない部分です。
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玄関の報道陣はまた増えていた。
林選手を待っている時に、難易度Ａの鳥谷選手が仏頂面で入って行くのを見たとイザベラがお母様に告げた。
今度はフクモトとカワムラのお母様が「桂」前で出待ちする。
出て来た。
相変わらず仏頂面だ。
たまにはファンにも笑顔を向けたらどうだと説教したくなる。
しかし珍しいことに、サインを引き受けた。
相変わらず仏頂面だ。
それでも二人は満面の笑みだ。
外にいると金村選手が帰って来た。名前を呼ぶ玄関のファンには目もくれずに裏口の方へと言ってしまう。
「手ぇぐらい振って……」
イザベラが呟いた。二〇メートルほど向こうの彼に、聞こえるか聞こえないかの声で。
聞こえたようだ。
振り返らず、右手を肩の高さで降った。
その姿は少し恥ずかしそうだった。しかし男らしくも見えた。
その後新人三人が揃って帰って来た。もちろん、その場でサイン会が始まる。また松下氏がサポートしながら。
そろそろゴルフ組も帰ってくるかもしれない。
金本選手や新井選手、城島選手も到着するかも。
報道陣がざわめき出したのもそのせいか。
玄関にタクシーが止まった。
金本か新井か、城島か……。
スーツ姿の男性が降りてくる。
その男性に多くのカメラが向けられ、フラッシュが何度も光る。
彼は……球団の社長さんだった。
なんだかファンは皆拍子抜け。
しかし報道陣はそれがお目当てだったようで、社長が奥へと姿を消すと途端に数が減った。
今社長の写真を撮っていた高部氏、中村氏もいない。
報道陣の数が減ってからゴルフ陣が帰って来た。
外人を乗せた車はそのまま裏口へと入って行った。
その裏口から建物内へ入る場所を眼鏡の下民から聞いていたイザベラは、三人を連れてすぐに向かった。
眼鏡の下民は既にそこにいた。一人で。イザベラが四人で来たことに、人数が増えたと嘆いていた。
扉が開いた。
開けた通訳らしき人が驚いた顔で入って来た。一般人はここには入れないはずだと。しかしそれは明日のキャンプインの日から。
それなら仕方ない、とＯＫしてくれた。
ゴルフに行っていた外人はブラゼルと昨晩足早に去ってしまったフォッサム。
これで四人とも今年初の選手でまだ貰っていないのは、城島選手だけになった。
また、玄関。もうここが定位置になってしまっている。
カメラマンの二人が戻って来た。どこに行っていたのかと問う。
「上の部屋で城島選手の契約更改。」
！ ！ ！ ！ ！
城島！
彼はいつ来たのだ。
ということは後二人も……？
平然を装いながらきょろきょろするイザベラが見た。
フロント横奥。エレベーターホール。
誰が見ても一般人ではなさそうな大男がエレベーターへと乗り込んだ。その前にもう一人いたように見えた。大男に並ぶと小さく見える男が。二人ともスーツ姿でキャリーバッグを引いていた。
イザベラがダッシュした。あれは絶対新井選手だったと呟きながら。
フランゾワーズもそれについて行く。
エレベーターより先回りしようと階段を駆け上がる。
二階。そこではエレベーターは止まらなかった。それの表示は四階まで行った。
また階段を駆け上がり四階まで行きかけた時、三階にいた誰かが「誰かおる。」と言った。何人かが選手フロアへの境界線であるガラス扉の前に立ち、そちらを向いて残念そうな声を上げる。
その先にいたのは新井選手。
まだ手を伸ばせば届きそうな距離ではあったが、これ以上踏み入ることは許されない。皆必死で「頑張ってください！」ということしかできなかった。
それを知ってか彼は歩きながらだが一礼して手を振ってくれた。
残念そうな声に少し喜びが混じった。
そして彼らは口々に言う。
「四階まで行ったん絶対兄貴やったわ。」
ゴルフ組も帰り、お休み組は出て来ない。そして何より今日オキナワ入りの大物選手は人目に晒されることなく全てホテルに引っ込んでしまい、しばらく出て来ないだろう。
こりゃあ玄関にいても収穫はなさそうだ。
それを裏付けるように、マスコミの姿も忽然と消えている。
午後三時。
やっと飯にありつける。
場所はやはりここ。リーズナブルに「食堂ピザ」。でもピザは食べたことない。
まだ営業しているだろうかと様子を窺って見ると、テレビカメラの機材が四人の男女の周りに置かれていた。テレビカメラがここにいるということは、やはりホテルにいても動きはなさそうだ。
イザベラは昨日マーボー丼と迷った炭焼鳥丼。
フランソワーズはタコライス。
お母様二人は昨日イザベラとフランソワーズが食べていたマーボー丼。
料理が出てくるのを待っているとロケ隊に動きがあった。今から撮影を始めるらしく、どのように撮るか打ち合わせをしている。見るとカメラに「ＡＢＣ」の文字。女性も見たことのある人だ。
「虎バン！」
フクモトのお母様が思い出したように言う。
女性はその「虎バン！」の堀友理子だった。
「私喜多さん好きなんです！」
と一人が言うと、
「私も！」
「めっちゃ良い子〜。」
と続いた。
「こいつ喜多さんと付き合ってるで！」
とマイクさんがカメラさんを指差す。慌てるカメラさん。しかし当然冗談。
「これ放送いつですか？」
「明日の夕方です。」
「あぁ〜見られへんわぁ〜。」
しばし楽しげな閑談に時間を費やし、ロケ隊は撮影に入った。四人の料理も出て来たが、「おいしいなっ。」とは小声でしか話せない。
堀氏が満腹状態の撮影。さっきスタッフと共に食べた、四人分の料理を一人でたいらげたという設定のようだ。
プ、ピュ〜ーーゥゥ……。
撮影中だったにもかかわらず、皆その音に耐え切れずに場が笑いに包まれた。
スタッフの一人が台に使っていた小さいイス。子供用の座って立つと音が鳴るというよくあるものだった。
恥ずかしそうに脇に退け、また撮影を始める。
五分ほどで撮影が終わり、一同が引き揚げる。
その後十五分ほどまったりした四人もお会計を済ませた。
ふと壁を見るとメニューの横に営業時間が書いてあった。
ランチは十五時までだった。
そうとは知らずに普通に入ってしまったことに誤りながら、四人は食堂を後にした。お母様二人がまた来ますと食堂の奥さんに言う。この時はまた来るつもりでいたのだから。
ホテルの方に向かって歩いていると、見たことのある風貌の男性がフラフラとこちらへ歩いて来る。
デイリーの松下氏であった。
ものすごくお腹を空かせた様子で。彼も食べるタイミングを見逃し、今に至る。昨日も逃してコンビニだった彼は、普通の食事を欲していた。四人はたった今出て来た食堂をすすめた。もう営業時間外だけど一人分くらいは作ってくれるかもしれない。そう言ってイザベラは彼をその食堂まで導いた。
しかし。
電気が消されて店内は暗かった。
四人が出た後すぐに閉めたようだ。
松下氏は落胆し、イザベラは申し訳なさそうに謝る。
「またコンビニおにぎりかぁ〜。」
そう呟く彼の寒そうな背中は、また満たされない胃袋を予想していた。
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＋ガッツ軍曹さんへ私信＋
白仁田くんの良い写真(安芸)あったら飲み会の時でいいので下さいm(_ _)m
私も沖縄安芸分現像したから持っていきますので。
